歯科医に聞く。キスをするとむし歯がうつるって本当?
「大人がかみ砕いた食べ物を赤ちゃんに口移しで与えると、むし歯がうつる」と言われています。それでは、大人同士がキスをして、むし歯がうつることもあるのでしょうか? ふと疑問に思ったので、歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生に詳しい話を伺いました。
■絶対ではないが、むし歯があると細菌が移動することも
――キスで風邪はうつるようですが、むし歯もキスでうつることがあるのでしょうか?
江上先生 むし歯の原因は、「ミュータンス菌」に代表される細菌です。パートナーの口の中にむし歯があった場合、この細菌がだ液を通して移動する可能性は高いです。しかし、そのときの健康状態、体の抵抗力によって、むし歯が発症するかどうかは人によります。「絶対にうつる」わけではありません。
――歯周病や口内炎があった場合はどうでしょうか?
江上先生 歯周病は、「歯周ポケット」と呼ばれる歯と歯ぐきのすき間にある細菌が原因で、歯ぐきに炎症を起こす病気です。この細菌も、食べ物の口移しやキスによって移動し、うつると考えられています。
口内炎については原因がさまざまです。ウイルスや細菌が原因の口内炎はうつる可能性があります。生活習慣や体調不良、あるいは魚の骨や箸などで刺して誤って口の中に傷を作り、口内炎となることもあります。このような細菌性ではない口内炎は、うつることはありません。
――「熱のはな」はウイルスが原因だと聞きました。うつりますか?
江上先生 熱のはな(口の端にできる口唇ヘルペス)は、「三叉(さんさ)神経」という顔面を走っている神経の節に潜んでいたウイルスが活発になり、三叉神経の末端である唇の端にできもののような炎症を起こす病気です。
ストレスや睡眠不足などで免疫力が低下しているときにできやすくなります。子どもの頃に神経内部に感染していて、20代~30代で発症する人もいます。(
歯科医療機器)
熱のはなの症状は、口の端がただれてピリピリして水泡ができ赤くはれます。これに触れると感染する可能性が高いです。また、普通の切り傷であれば1週間ほどで治りますが、熱のはなは通常の傷より治りにくいのが特徴です。熱のはながあるときは、キスは避けるようにしてください。
同じ理由で、熱のはなのウイルスを持つ大人から子どもへ食べ物を口移しすると、感染する可能性は高いと考えられます。
■キスの習慣がある欧米人は、口の中の清潔に敏感
――相手にうつさないための予防法があれば、教えてください。
江上先生 歯磨きをまめにして、むし歯や歯周病にならないよう歯科の定期検診を受け、常に歯の衛生を保つことです。明らかにむし歯や歯周病があってうつしたくない場合は、キスを避けるしかありません。(
タービンハンドピース)
あいさつ代わりにキスをたくさんする欧米の人たちは、「口腔(口の中)の清潔」についての意識が大変高いです。「健康や清潔のバロメーターは歯にある」と考える人も多い。日本人も見習うべき点があるのではないでしょうか。
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