歯列矯正は美容のためにするもの、というイメージを持っている人は少なくないでしょう。しかし、歯並びにはもっと重要な意味があります。歯並びが悪いと虫歯になりやすいだけでなく、アレルギー性疾患やうつ病、腸疾患などさまざまな病気にかかりやすくなると言われているのです。また、歯列矯正は永久歯が生えそろってから行うものだという先入観を持っている人も多いと思われますが、実は、まだ乳歯が残っている段階で処置するのがベストなのだそうです。まだ一般にはあまり浸透していない「小児矯正」を実施している歯科医、Smile10デンタルクリニックの山口和巳(やまぐち・かずみ)理事長に、小児矯正の重要性について聞きました。
歯列矯正は大人がやるものというイメージがありますが、子供のうちからしたほうがいいのでしょうか?
確かに日本では、歯列矯正は早くても中学生くらいからするのが一般的ですね。実はこれは、米国方式なんです。ヨーロッパでは、まだ乳歯が残っている年齢、具体的には6〜10歳のうちに行います。大人になってから矯正するよりも、そのほうがずっと短期間かつ低コストで済みますし、痛みなどの苦痛もずっと小さいんですよ。
もちろん、矯正はしないで済めばそれに越したことはありません。矯正が必要かどうかは、だいたい6歳までに決まります。歯並びは遺伝だと思っている人も多いですが、遺伝が影響するのは数%程度だと言われています。ですから、6歳になるまでに歯並びが整っていれば、その子は大人になってからも歯列矯正をする必要はほぼないと言えます。ただ残念ながら、平成23年度の厚労省の発表では、小学生の43%に歯列不正が認められたという報告があります。(矯正歯科用具)
どうして6〜10歳の小児が歯列矯正に適しているのでしょうか? 大人の矯正との違いはありますか?
永久歯が生える順番に関係があります。最初に生える永久歯は、一般に「6歳臼歯」と呼ばれる第一大臼歯で、これは乳歯がない、顎のいちばん奥に生えてきます。その次に前歯(中切歯と側切歯)が生え替わり、そのあと、第一大臼歯と前歯に挟まれた3種類の歯が生え替わります(下の図のグリーンの部分)。そして最後に「12歳臼歯」と呼ばれる第二大臼歯が生えてきて完成です。
小児矯正は、前歯が生え替わったあと〜グリーンの部分が生え替わるまでの間に行います。これが6〜10歳の時期というわけです。この時期はまだ顎が発達可能な時期なので、この時期に前歯の位置を正しくし、顎に十分なスペースを作ってやります。そうすれば、後から生えてくるグリーンの部分は自然とキレイに並ぶんです。これに対して永久歯が生えそろってから矯正する場合は、すべての歯が整然と並ぶだけのスペースがないため、左右1本ずつ歯を抜いてからほかの歯の並び方を少しずつ変えていくほかありません。
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