歯石の放置が糖尿病やがんにつながる仕組みを医師が解説
虫歯などの治療に行ったときに「歯石も取りましょう」と促されたことはないだろうか。なんとなく取った方がよいということは分かるが、そもそも歯石があることで口腔(こうくう)内にどんな問題が発生してしまうかをきちんと理解できているだろうか。
今回は、M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長の今村美穂医師に、「歯石」ができる原因とそのデメリットについて説明してもらった。
歯石は目に見えない歯茎の中にもできる!
きちんと歯みがきをしているつもりでも、いつのまにか歯に付着してしまっている歯石。この歯石とは、どういう仕組みでできているのだろうか。
「歯石とは、お口の中で歯の周りにつく石のようなもの。プラーク(細菌の塊)が唾液の中のカルシウムやリンなどのミネラル成分と結びついて、石のように硬くなったものを歯石といいます」。
歯では食事の度に、表面からカルシウムやリンなどのミネラル成分が溶けだす「脱灰」という現象が起こっている。歯の溶けだした部分は、唾液の中にあるミネラル成分によって「再石灰化」し、元の歯の状態に戻るようになっている。
だが口の中にプラークが残っていると、この唾液の中のミネラル成分とプラークが結びついて石灰化してしまい、およそ48時間で歯石となってしまう。プラークは口をゆすぐ程度では落ちず、歯の磨き忘れや磨き残しがあるとたちまち歯石が作られてしまう。
また、歯石は目に見えるところにばかりできるわけではない。目視できる範囲の歯茎上にできる「縁上歯石」のほかに、歯茎の中にできる「縁下歯石」と呼ばれるものも存在する。この縁下歯石の多くは血液と唾液のミネラル成分が結びついてできた歯石で、色も黒く見える。目に見えにくいところにできてしまうだけ、「気付きにくい歯石」と言えよう。
歯石が歯の周りにできてしまう石というのは理解できたが、ただの石なら放っておいてもよさそうな気もしてしまう。歯石は、私たちにどのような悪影響を及ぼすのだろうか。
「歯石自体は石なので、悪いものではありません。ですが、歯石には軽石のように小さな穴がたくさん開いており、そこに細菌が繁殖して毒素を出してしまいます。その毒素が歯茎を腐らせたり、歯の周りの骨を溶かしたりしてしまいます。歯石の表面はヌルヌルしていますが、これは『バイオフィルム』と呼ばれ、 微生物が自身の産生する粘液とともに膜状の集合体を作る現象です。お口の中は細菌の多い場所なので、このバイオフィルムに細菌が感染し、虫歯や歯周炎を引き起こしてしまいます」。
歯石がさらなるプラークを呼ぶ
歯石の表面はザラザラしているためさらにプラークを招きやすく、発酵したプラークは口臭の原因になる。歯石が歯と歯の間の磨きにくい部分に詰まってしまうこともあり、歯石の小さい穴に棲(す)みついてしまった細菌は、通常の歯みがきでは落としにくくなってしまう。
また、清潔さを感じる歯の色といえばやはり白い歯だが、歯石が多く付着すると着色も付きやすくなり乳白色から黄色く見えるようになる。やはり、黄色い歯は見た目からして臭いそうな気がしてしまうのではないだろうか。そのほか、歯石の細菌が歯茎を刺激してしまうことで出血の原因になったり、歯石を異物と認識した白血球が歯茎に集まることで歯茎が腫れてしまったりすることも。
腫れた歯茎から出てくる浸出液も口臭の原因になるほか、出血した血液が唾液のミネラル成分と結びついて、さらに黒い色の歯石が作られるという悪循環に陥る。場合によっては、歯茎からうみが出て歯肉炎となり、歯周炎へと移行して最後には歯が溶けて抜けてしまうこともあるというから恐ろしい。
「歯周炎は糖尿病や心臓病、脳卒中、慢性腎疾患、肺炎、骨粗しょう症、がん、早産などの合併症を伴うこともあります。そのため、歯周炎を改善することはとても重要なことだと考えています」。
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「たかが歯についた石」と侮ってしまうと、いつの間にか重症になって歯を失ってしまうかもしれない。プラークを毎日の歯みがきでしっかり落とし、定期的にクリニックなどで口内をチェックしてもらうことが、歯の健康を保つ最善策だといえるだろう。
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