歯周病をあなどるなかれ!知っておきたい妊娠中の歯周病
■歯周病を患う妊婦の低体重・早産リスクは7.5倍!
1996年アメリカの研究機関が早産や低体重児を出産した人を調査したら、歯周病が進行していた人がそうでない人の7.5倍もいた、というショッキングな結果が発表されました。さらに、2003年の鹿児島大学での調査でも同様の結果がでており、歯周病の人の早産・切迫早産のリスクは通常の約5倍だったと報告されています。タバコやアルコールが早産の原因としてよく知られていますが、これらの研究結果を見ると、歯周病患者ははるかに高いリスクを抱えていることになります。
妊娠中は女性ホルモンの分泌が増えますが、中でも特にエストロゲンは特定の種類の歯周病原細菌の増殖を促すことがわかっています。妊娠周期のホルモン分泌量は通常の10~30倍にもなり、妊娠中期から後期の妊娠性歯肉炎にかかりやすくなるのです。口腔内カメラ
歯周病と早産の関係のメカニズムはまだはっきり解明されていませんが、近年の研究により少しずつ明らかになってきました。出産が近づくと、子宮収縮作用のあるプロスタグランディンという物質が増え、陣痛を起こします。そしてこのプロスタグランディンの分泌を促すのがサイトカインという生理活性物質です。
サイトカインは様々な炎症により増殖する性質があり、歯周病により炎症を起こしている状態は、サイトカインが増殖しやすい状況にあります。その結果、プロスタグランディン分泌が促され、子宮の収縮が起きて早産につながる、というメカニズムが解明されつつあります。
また低体重児との関連についてもはっきりと解明されてはいませんが、歯周病菌の毒素や炎症性物質がママの血液中に入り、それが胎盤を通過して胎児に影響を及ぼし、胎児の発育を妨げることがあると考えられています。
■歯茎の異常に気づいたら、迷わず歯科医へ
妊娠中は歯がボロボロになる、と言われますが、これは赤ちゃんに栄養をとられるわけではなく、つわりのせいで歯ブラシを口にいれると吐き気をもよおし、しっかりした口腔ケアができないためと考えられています。また、歯周病は30代後半以降に急増するため、高齢出産の妊婦さんは特に注意が必要です。
歯茎が赤く腫れる、痛みを感じるなどの症状を感じたら、すぐに歯医者に行くことをおすすめします。歯周病治療をした妊婦はしなかった場合に比べて低体重児出産のリスクが約5分の1に減少するというデータもあります。初期の歯茎の炎症ならば、クリーニングや歯垢の除去をするだけでもかなり改善されます。
それに、臨月が近くなってくると仰向けに寝ることがままならず、治療が困難になることもあるので、妊娠中期ごろまでには治しておきたいものです。受診時には妊娠中有であること忘れずに伝えましょう。
歯周病の予防には、丁寧な歯磨きが効果的です。歯と歯茎の境目はとくに念入りに、小刻みにブラッシングするようにします。一日最低15分間かけて行うのがよいとされています。正しい歯みがきにより歯周病のもとである細菌を取り除き、歯茎の血流をよくすることが歯周病予防に役立ちます。早産のリスクを少しでも減らすため、毎日の口腔ケアに気を配るようにしましょう。