歯科医院へ行くと聞こえる「キィ~~ン」というあの音、好きだという人はまずいないでしょう.この「キ~~ン」の音源はエアータービンという歯を削る器械です.エアータービンは1957年米国で考案され、1960年代に製品化されたのですが、あっという間に日本中の歯科医院に広まりました.
それまでの歯を削る器械ではで20分も30分も時間がかかっていたクラウンやインレーの形成が、エアータービンではほんの数分でできるようになったからです.
特にブリッジや陶材焼付冠などの切削量が必要な補綴物の形成がいとも簡単にできるようになったので、その便利さに多くの歯科医が飛びつきました.

それまでは一本一本のむし歯を治すのがやっとだったのが、噛み合わせや審美性を考えて、口の中全体を改変する事が出来るようになりました.「一歯単位から一口腔単位へ」という考えが広まり、口の中のほとんどの歯を削ってしまう治療も珍しくなくなりました.
その結果、見た目やその場限りの機能回復のために、健全な歯質を削ったり、健康な神経をとったりしてしまうことが抵抗なくなく行われるようになりました.補綴物を入れるために「戦略的抜歯」といって抜く必要の無い歯まで抜くことを提唱する歯科医さえ出現したのは、“削ること”、”抜くこと”に抵抗が無くなった歯科医たちの傲慢さがよく表れています.

エアータービンの出現による歯科の過剰介入は1960年代、70年代と徐々に顕著になり、現在でもその傾向は引き継がれています.
戦略的抜歯はオッセオインテグレートのインプラントの出現により、その頻度は以前より増しています.