救急の2%が歯の治療、低所得層の利用減らず、米国の報告
オバマケアによって米国でも日本のように誰でも医療を受けられるように変わろうと動いている。
低所得者も歯科診療を受けられるようになったものの、州によっては保険適用としていない場合があるなど問題も起きているようだ。
結果として、救急利用の2%程度が歯科という異常な状況になっているという。
歯の治療に救急外来を利用
米国スタンフォード大学の研究グループが、保健政策分野の専門誌ヘルス・アフェアーズ2015年8月号で報告。同大学も紹介している。
救急外来の2%以上がけがとは異なる歯科治療のためとなっているという。
「医療費負担適正化法(いわゆる、オバマ・ケア)」によってメディケイドは歯科診療にも拡張されたが、成人に対する歯科診療を保障していない州も多いと説明する。
民間の保険や個人で治療費を負担するのは、メディケイド受給者には高額すぎて手が届かない。多くの人が救急外来を利用する。dentalzz
2001年~2008年に、虫歯、歯痛、歯肉炎など普通の歯科の症状のために救急外来を利用する人は41%増加。ほかの病気やけがのために救急を利用する人の増加は13%であった。
地域によっては歯科診療に対してメディケイドの保障がない、地方での歯科医の不足、都市部の歯科医がメディケイドの患者を受け入れないなどが、その理由にあるという。
保険で受け入れていない
医療費負担適正化法によって歯科の保険が拡張された結果、メディケイド受給者の約830万人が歯科治療の保険適用になっていると見られる。
けがではない歯科治療のために救急外来が使われた利用率について、2010年に29州において、郡レベルの調査を実施。地方では、救急利用率が低下していた。歯科治療を目的とする救急利用の90%は都市部で起きている。
都市部では歯科医の数は足りているが、救急外来の利用者は減っていない。
メディケイドを受け入れる歯科医の割合は低いという。例えばミズーリ州では11%、フロリダ州では15%、ニューヨーク州では20%程でしかない。
2007年に始まった景気後退により、予算の削減とメディケイドの加入者の増加が起こり、多くの州ではメディケイドの給付金を減らしており、状況を悪くしているという。
2013年1月現在で、およそ4500万人が歯科医の不足する地域、特に地方に住む。今後数年間で、多くの歯科医が引退するのに伴い、全国的に歯科医の数はさらに減少すると見られている。
医療システムの問題
「普通の外来で治療できるのに、救急で対応している。歯科診療が特別扱いされている証拠だろう。歯科診療は、健康と福利の一部と見なされるべき。贅沢品ではなく、必需品」と研究グループは注意を促す。
解決法もいくつか提案している。例えば、救急医療施設に歯科診療所を併設。予防医療や補綴やマイナーな抜歯について、歯科医ではなくても扱えるようにする。定期的なスクリーニングを行うなど。
歯科を身近に受けられる日本との差から医療について考えるヒントもあるかもしれない。