「親知らず=痛い」というイメージが多くの方にあるのではないかと思います。「親知らずは抜かなければならない」とか「親知らずを抜くとひどく腫れる」とか・・たしかにあまりいいイメージはないですよね。ではどうして親知らずというものが存在するのでしょうか?歯科医師・岸本 佐智先生による監修記事で解説します。

親知らずの存在意義とは・・?

親知らずとは大臼歯のなかで一番奥に生えてくる第三大臼歯のことであり、だいたい10代後半から20代前半に生えてきます。しかし、なかにはもともと親知らずが全く備わっていない人や、必ずしも4本すべて備わってない人もいます。

また、親知らずがもともと傾いて埋まっていたり、生えるスペースがなかったりしてきちんと生えてこないケースも多々見られます。

このような埋まってきちんと出てこないことの多い親知らず、果たして存在意義があるのでしょうか?
太古の時代には必要だった?

太古の時代においては、人々は硬い木の実や硬い肉などを中心に食べていました。そのため食べる時にはよく噛む必要があり、顎の骨がそれに伴ってよく発達していたため、親知らずが生えるスペースが十分にあったといわれます。

また、よく噛まなければならないと言うことは歯を擦り減らすことでもあります。これは噛む面だけではなく、歯と歯の間の面においても起こってきます。そうすると減った分のスペースで親知らずの生える余地が十分にできた、という説もあります。大昔の人々にとって、歯は生きていくためには不可欠のものでした。ですので大人になって生えてくる親知らずには大きな意味があったのではないか、ということが考えられます。
現代の食生活には親知らずは必要ない?

ところが、現代の食生活においては子供のころから調理された軟らかい物を中心に食べることが多く、あまり噛むことがなくなってきたので顎が十分に発達することができなくなりました。その結果、親知らずの生えるスペースが足りなくなってしまい、きちんと生えることができなくなるケースが増えてきました。そのために、退化現象として親知らずが備わっていない人がいるという説がありますが、これに関してはクロマニヨン人や弥生人でも欠損している状態は既に発現していた、との説もあり、意見の分かれるところです。
トラブルを起こす親知らずのパターン

1.斜めになっている、または水平に倒れている

歯ぐきから露出している場合、食べ物がはさまりやすい
歯磨きがきちんとできないことにより不潔になりやすく、虫歯や歯周病を起こしやすい
上の理由より、隣の歯にも虫歯や歯周病をおこしやすい
手前の歯を押す力が働くので全体の歯並びがずれてきたり、ぶつかっている手前の歯の根っこを吸収(溶かして)しまうことがある

2.まっすぐ生えているが歯ぐきから中途半端に出ている

プラークコントロールが非常に難しいため、虫歯や歯周病のリスクが高い

3.きちんと生えているが噛む相手がいない為に伸びている

歯は噛み合う相手がいないと伸びてくる性質があり、その場合は対合の歯ぐきを噛むようになるため、口の中を傷つけたり口内炎ができる原因となる歯科用ダイヤモンドバー
食事の時など、横にすりつぶす動作をする際に異常な当たり方をするようになり、顎関節症を起こすことがある

まとめ

以上、親知らずとそのトラブルについてお話ししました。きちんと生えて上下の歯も噛み合って、ケアをしっかりすれば他の歯と同じように使うことができますし、悪いことばかりではありません。問題がなければ、抜かなくていいケースもあります。親知らずの生え方、埋まり方に関しては歯科医院でレントゲンにて確認することができます。親知らずが気になる方は、まず歯科医師と自分の親知らずの状態についてよく話し合ったうえで今後どうするかを決めていくのが良いでしょう。