「一子生むと一歯失う」という言葉を聞いたことがありますか?

「女性は妊娠すると、お腹の赤ちゃんに歯のカルシウムを取られるから歯がもろくなる……。」と言われてきました。

でも実はこれ、迷信なのです!

ではどうして妊婦さんは「むし歯になりやすい」、と言われるのでしょうか?

今回はママ歯科医師である筆者が、プレママのむし歯の真相と対策について解説します。

■ 「妊娠中、むし歯になりやすい」3つの理由

妊婦さんがむし歯になりやすい理由は、いくつか考えられます。

(1)「胃が圧迫されるから少量ずつたべたい…」食事の回数が増える

妊娠中は食べづわりでちょこちょこ食べたり、妊娠後期は胃が圧迫されて少量ずつ食べたりと、食事スタイルが変化します。

食事の回数が増えると、口の中は酸性から中性に戻る暇がなく、歯が溶けやすい環境にさらされます。

(2)「口に入れるだけで吐き気…」つわりで歯みがきできない

つわりで起き上がるのも辛い時期は、歯みがきが不十分になります。

筆者も、口の中に歯ブラシを入れただけで吐き気を感じた経験があります。

(3)ホルモンバランスの変化

妊娠中は、ホルモンバランスの関係で免疫力が低下しています。そのため、口の中で細菌が増えやすい状態なのです。

妊娠出産すると歯のカルシウムが減って歯が弱くなる、という事実はありません。そうではなく、上記のような妊娠中の特徴によって、むし歯や歯周病になりやすくなるのです。
■今日からできる!プレママのむし歯対策

(1)歯磨きがつらい時はうがいを!つわりの期間を乗り切る工夫

つわりで歯みがきが辛い時期は、食べた後はうがいをしましょう。こまめに水を飲むのもよいでしょう。

筆者は朝と夜につわりがひどかったので、お昼の比較的吐き気の弱い時間帯に歯みがきするようにしていました。

歯磨き粉の味やフレーバーも刺激の少ないものを使ったり、辛いときは歯磨き粉を付けずに磨くのもよいでしょう。体調のよいタイミングを見つけて、うがいや歯みがきができるといいですね。

(2)歯の再石灰化を防ぐ!ガムでリフレッシュ

何か口に入れたいときは、砂糖を含まないガムを噛むとよいでしょう。キシリトール配合のものがオススメです。噛むことによって唾液の分泌を促し、歯の再石灰化に役立ちます。

気分もリフレッシュしますし、体重管理の面でも、ガムはお役立ちアイテムです。

(3)歯科健診票を活用して

母子健康手帳をもらったときに、歯科健診票(割引券)も配布されたら、ぜひ利用しましょう。

つわりで辛い時期は受診しづらいですが、体調が落ち着いたら、なるべく早めに健診を受けるとよいでしょう。

(4)むし歯は早めに治療

妊娠後期はお腹が大きくなり、歯の治療も難しくなります。妊娠中は歯が痛んでも服用できる薬が限られています。

理想は“妊活”を考えた時点での歯科健診です。

ぜひご家族みんなで定期健診を受けましょう。

(5)生まれてくる赤ちゃんの歯を守ろう!

妊婦さんだけでなく、赤ちゃんの歯のことも意識しましょう。

赤ちゃんのむし歯を予防する重要なポイントが、出産前からのママや家族全員のお口の中を清潔に保つことです。すなわち、家族全員のむし歯菌を減らすことが目標です。

なぜなら、むし歯菌は生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中にはいません。大人が使った箸で食べさせるなど、唾液を介して、何らかの機会に赤ちゃんへと感染してしまうのです。

生後1歳7ヶ月~2歳7ヶ月は、特に感染しやすい時期と言われています。大切な赤ちゃんをむし歯から守るためにも、ママやパパや家族全員のむし歯はしっかりと治しておきましょう。

いかがでしたか?

筆者はつわりの時期がかなり長かったため、思うように歯みがきができませんでした。ひどいつわりの期間は、お水を飲むのさえ辛いときがあります。

脱水には注意し、氷をなめたり、お茶でうがいするなど工夫して乗り切りましょう。

妊娠中はむし歯だけでなく、歯周病も注意が必要です。X線フィルム自動現像機

ぜひ、妊活スタートのタイミングで、ご夫婦で歯科健診を受け、お口の中も赤ちゃんを迎える準備をしていきましょう!