歯の治療が超進化! ミクロレベルの「顕微鏡治療」
清潔感のある美しさを目指すなら、「歯」のメンテナンスは重要なポイントです。2月の月間特集「エイジレス美人は、パーツにこだわる」、第3回のテーマは「歯」。顕微鏡で患部を拡大しながら高精度の治療を行う、最先端の「顕微鏡治療」を紹介します。
お話をうかがったのは、「山口歯科クリニック(東京・恵比寿)」の山口義徳さん。日本ではようやく普及率が5%に達したという顕微鏡治療に、2005年から取り組んでいます。
「見えない」状態で治療する。それが歯科医の普通だった
「顕微鏡は色々な場面で使われていますが、歯の治療に使うようになって1番大きく変わったのは、"それまで全く見えていなかった所が見えるようになった"ことです」と山口さん。
暗い口の中で、小さな歯のさらに小さな患部を観察することは、実は肉眼では非常に難しいこと。そのため従来の治療法では、歯科医の手先の感覚と経験が頼りでした。
「特に奥深くに患部がある歯の根の治療は、暗闇の中で手探りするようなもの。そんな治療にずっと不安を感じていて、これではいけないと顕微鏡治療を学ぶことにしたのです」
歯の極小のヒビ割れや、過去の治療で残ってしまった金属片を見つけること。口臭のもとになる歯周ポケットの奥の歯石を、柔らかい歯の根を傷つけずに除去すること――。顕微鏡により、自信を持って精密な治療ができるようになった山口さん。今では休日でも「治療したい」とウズウズするほどなのだとか。
最大20倍。細部まで「見える」ことが歯科治療を変えた
つづいて治療室を拝見。プライバシー重視の完全個室に、2台のモニターと顕微鏡治療のシステムが設置されています。
模型を使って治療の様子を見せてもらいました。左手に持つ鏡で映した患部が、顕微鏡で3倍~20倍に拡大され、モニターに映し出される仕組みです。患部に正確に照明を当てることができるのも、顕微鏡治療の利点。鏡には左右逆転して映るため、治療には特殊な技術が必要となります。
▼モニターには、患部の状態がくっきりと。こちらは歯に穴を開けて治療しているところ。他の歯には緑の「ラバーダム」をつけて、細菌や金属片が飛び散らないようにしてあります。
▼削った穴に、少しずつ特殊なボンドを注いで修復。
▼まるで穴など存在しなかったように、きれいに修復されました。肉眼だけで治療すると、隣の歯に小さな傷をつけたり、ボンドが隣の歯との間についてしまって、デンタルフロスが通りづらくなったりするのだそう。
サングラスのようなこちらの装置は、「ヘッドマウントディスプレイ」。患者がつけると、医師が顕微鏡で見ている映像をリアルタイムで一緒に見ることができます。
こわごわ装着し、自分の歯を見せてもらったところ、以前にかぶせたセラミックがちょっと浮いているのが発覚。磨き残しや歯茎の様子までハッキリ分かります。自分の歯をこんな鮮やかな大画面で見るなんて、人生初の体験です。今後の歯磨きへのモチベーションがぐっと上がりそう。
治療後はカウンセリング室で、顕微鏡の映像(下のモニター)や、治療前に撮影したCTの3次元データ(上のモニター)を見ながら、歯の状態や今後の方針を患者に説明します。
「CTにより得られる多くの情報によって、安全でスピーディな治療ができます。根の治療やインプラント治療の人には、特に欠かせません」
医師も患者も全てが「見える」状態で行われるのが、顕微鏡治療。こんなガラス張りの治療なら、分からないことはどんどん質問して、医師との間に深い信頼関係を築ける気がします。
ネックは「保険制度」。顕微鏡治療が広まらない理由
従来の歯科治療の概念を大きく変える、良いこと尽くしの顕微鏡治療。なかなか日本で広まらないのはなぜなのでしょうか。
「ひとつは設備費です。顕微鏡の本体が500万円くらい。治療器具も自分で特注したり、海外から取り寄せなくてはなりません。治療法を学ぶセミナーの参加費も、1日で10万~30万くらいかかる。使いこなせるようになるまでのコストが大きいのです」
また、高精度の治療を行う顕微鏡治療では、1回の治療につき1時間~3時間ほどかかることがほとんど。所用時間の長さや技術的な難しさから、保険診療外の自由診療でなければ運営が困難で、治療費が高くなってしまうのが実情です。
歯科 口腔内カメラ
「私のクリニックも自由診療です。保険適用内の材料、治療内容では、自分や自分の子どもに受けさせたいと思う治療ができなかった。世界では良い材料や治療法がどんどん出てくるのに、保険では制約があり、使えないものも多いのです。自由診療なら、患者さんと話し合いながら、お互いに納得する治療と設備、素材を提供することができます」
メンテナンスや予防コースで、エイジレスな歯を手に入れる
むし歯治療だけでなく、歯石とりのようなメンテナンスも精密にできるのが顕微鏡治療の魅力です。特に30代~40代女性におすすめしたいのは、1時間×4回で行う「予防コース」。歯ブラシ指導や唾液検査に加え、虫歯や歯周病になりにくい生活の仕方をレクチャーしてくれます。
「どうしても歯茎が痛むという女性に、食生活や睡眠の指導をしたところ、1か月で良くなったことがありました。歯の健康と体の健康は直結しているので、色々な面からアプローチするようにしています」
お話をうかがうほど、歯科治療の奥深さを痛感した今回の取材。歯を抜くかどうか? といった決断を迫られたときのセカンドオピニオンとしても、顕微鏡治療は強い味方になってくれそうです。エイジレスな美のためにお金をかけるなら、身体全体の土台となる「歯」に使うのは、賢い選択かもしれません。
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