八重歯は治すべき? 日本での“歯列矯正”のイメージと始める適齢期
【ママからのご相談】
中学2年生になる娘の歯並びのことで悩んでいます。歯が生えそろった段階で八重歯ができていて、学校の歯科検診で歯列矯正をすすめられました。 歯の健康のために必要だといわれましたが、金額的な負担を考えるとどの程度必要性があるのか疑問です。また、歯並びが悪いと将来的に就職や結婚にも影響を与えるという海外の考え方が日本にも浸透しつつあるとのこと。これは本当でしょうか? また、歯列矯正はもっと大人になって本人が必要を感じてからでは遅いのでしょうか?光照射器 歯科
●A. 歯列矯正に対する認識は国によって異なります。
こんにちは。海外在住プロママライターのさとうあきこです。
八重歯をかわいいと見るのは、日本だけだといわれています。先進国の多くでは、八重歯だけでなく歯列の乱れはできれば整えたいと考える人が大半です。一方で、世界の多くの国では、いまも歯列矯正という言葉さえ一般的には認知されていない地域もたくさんあります。
今回は、日本での歯列矯正への考え方と欧米諸国での考え方の違いを、その適応年齢についても含めてご説明します。
●日本におけるこれまでの歯列矯正
日本における歯列矯正は、食事や会話といった生活に支障がでるほどの歯列の乱れに対して重点的に行われる特殊な治療として認識されてきました。
逆にいうと、生活に支障がない限り歯列矯正を行う人は少なかったのです。このように、歯列矯正はあくまで“健康のため”に行われる治療だったのです。
ところが、近年になって“美しさ”のための歯列矯正が認識されるようになりました。芸能人などが見た目の美しさのために歯列矯正をし、その結果である完成された歯並びのきれいさに驚いたのも一因でしょう。
●欧米における歯列矯正
アメリカやイギリスといった欧米の先進国の多くでは、日本よりもかなり高い確率で歯列矯正が行われています。
実はこれには、歯列矯正が保険のきかない高価な治療であることから、“歯列矯正をした”=“裕福”=“歯並びがきれい”という関連性が人々の間に深く根付いていることが関係しています。すなわち、歯並びが悪いと“歯列矯正ができないほど貧乏”だと見られる可能性があるわけです。
そのため、欧米の家庭では永久歯が生えそろった段階で、「歯列矯正をするべきかどうか」を判断する機会が必ずあります。その判断基準は、「歯並びが悪いかどうか」ではなく、「歯並びが歯列矯正が不要なほどきれいかどうか」です。
このように、欧米の子どもたちは中学生になるころ、クラスの半数程度が歯列矯正を一斉に始めます。歯列矯正器具をはめている姿がごく普通の風景の一部なのです。
●これからの日本の歯列矯正
日本における歯列矯正も、以前に比べるとより多くの人の選択肢となりました。それでも、現時点では実際に治療を受けるのは、歯並びに比較的大きな問題を抱えている場合か、歯並びを含めた“美”に強い関心を持つ人です。
以前ほどではないにしても、歯列矯正器具をはめている姿はまだ珍しく、学校の教室などでは目立ちます。いじめにまで発展することは少なくとも、注目を浴びて質問を受けることも多いようです。
また、親世代の歯列矯正に対する認識が追い付いていないこともあり、歯が生えそろう中学生くらいの年代での歯列矯正は決して多くありません。実際に治療を受けているのは、社会人となり自分の判断と費用負担で歯列矯正ができる大人たちが多いのです。
●歯列矯正の適齢期
歯は、乳歯から永久歯へと生え変わります。歯列矯正を行うのにもっとも適しているとされるのは、永久歯が生えそろったときです。個人差がありますが、日本人の場合には平均して14、15歳くらいだといわれています。欧米人は成長が早いことが多く12歳ごろから行うこともあります。
これには、この段階の歯がまだ根に柔軟性があり、短期間で矯正しやすいことと、10代後半から20代前半といういわゆる“お年頃”を美しい歯並びで迎えるためという理由があります。
ところが、歯は永久歯がそろった後も動き続けます。15歳で始め16歳で完成した美しい歯並びもその後7年から10年程度で再び崩れが出てくる可能性があるのです。
そのため、美しい歯並びを保つためには、リテーナーと呼ばれる睡眠時にはめる矯正器具で自己矯正を続けたり、20代半ば以降も定期的に歯列矯正を行う必要があります。
歯列矯正は何歳でもできます。ただ、その矯正にかかる期間は若い方が短く、金額も安くあがる傾向があることと、美しい歯並びで過ごしたい時期に合わせて始めたほうがいいことなどを考慮してその時期を選ぶといいでしょう。
確かに、歯並びが美しくきれいであるにこしたことはありません。ただ、一度始めれば1年程度は矯正器具を装着し続けなければならないこと、効果が続くであろう期間は矯正後7~10年間であろうこと、矯正後にかかる分も含めた費用などを総合的に考慮して、その実施と時期を決めていくべきでしょう。
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